備忘録 〜読書と映画と、時々推しと〜

NEWS・作家 加藤シゲアキくんのファンです

川上未映子さん「ヘヴン」について

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こんにちは。今回は川上未映子さんの「ヘヴン」について書きたいと思います。2009年9月に講談社文庫から刊行されています。

シゲアキ君との関係では2019年のタイプライターズに川上さんがゲストで出ています。また「ヘヴン」についてはNewsweekでもシゲアキ君が「人生を変えた本」として紹介しています。

初めて読んだ時には、感想というものがでずに、どこか目を背けたくなる感じがして、一度読んだきり本棚に飾られていました。最近、また読み直しました。2回目は思いの外、冷静に読めました。

苛められた理由

最近は、ヘヴンに出てくるほどの露骨ないじめは減った印象があります。むしろ陰湿なものが増えているのが困り物の世の中です。

さて、主人公の僕とコジマはクラスの生徒から目を背けたくなるようないじめを日常的に受けています。その理由なんて言うのは、それこそ百瀬がいうような”たまたまそこに君がいて”と言うようなものだったのかもしれません。

だけれども僕からすれば、たまたまではなく、僕は明らかな自分の斜視と言うものに理由をおいています。理由があるから、耐えられたのではないかとすら思います。

一方、コジマは自分の容姿が理由だとははっきり言っていません。もっと抽象な、”しるし”と言うものと苛めを結びつけています。それはいわゆる一般的に考える”いじめ”とは違うものとして苛めを捉えています。自分が生きるための必然として起こる出来事として捉えているような気がします。

僕は、体育倉庫で酷いめに合い、どんどん精神が病んでいくのにも関わらず、コジマはむしろ強くなっていきます。その先にある”ヘヴン”を待ってたのだろうと思います。

思春期から大人になる

中学生にとって、目の前で起こっていることが世界の全てのように感じてしまう。百瀬が言う言葉は、どこか納得さえしてしまうところが憎たらしい。僕もどこか納得しかけている部分があった。許せないことではあるけれど、僕からすれば全てだと思っている世界が”たまたま”と知って、この事態をどう解釈するのか迷い始めていたように思う。

思春期から大人になるって、そういう所だと思います。高校生になると、何か急に世界が開き始めて、大学にいくと何か得体のしれない自由を手に入れた感覚。全く清々しい青春物語ではないけれど、ある意味、そんな大人になる視点を不意に義母や医者からもらうような感じがしました。

僕には、入り込みすぎずに、思春期男子には絶妙な距離感を維持する義母がいた。しかしコジマはどうなのだろうか。”ヘヴン”にたどりつかないでくれることを祈りたいと思いました。

川上未映子さんの作品

川上未映子さんの作品は他にも「乳と卵」や「夏物語」を読みました。女性が大人になると言うこと。女性性を生きると言うこと。子どもを産むと言うこと。など繊細な性に対する変化や感情を扱う作家さんと言う印象が強いです。「ヘヴン」は少し違う雰囲気だと初めは思いましたが、この作品も大きく見ると、子どもから大人へと言う思春期の繊細な心情を描いていると感じます。