備忘録 〜読書と映画と、時々推しと〜

NEWS・作家 加藤シゲアキくんのファンです

『ジェノサイド』高野和明さん お勧めです

こんにちは。今回は高野和明さん著書の「ジェノサイド」(2011)角川文庫 について書きたいと思います。シゲアキ君も折に触れて紹介していますね。最近だと2021年の『ダ・ヴィンチ』でも紹介しています。

あまりにもダイナミックすぎて、映画化などは難しいと思われるからこそ、書籍なのだと思います。まだ読んでいない方は、本当に読まれることをお勧めしたいです。

改めて読みました

今回ブログを書くにあたり、再読しました。初めに読んだ時は、ただただ圧倒されました。先がどんどん気になると言う、先行刺激がものすごい勢いで、自分に降りかかってくる印象でした。目を覆いたくなるような場面はありましたが、結末に急がされる衝動に駆られてあっとう言う間に読み終えました。

再読前に、LRA軍に操作されている子ども兵のことを思い出しました。露骨な描写が、再読を少し躊躇させましたが、読み始めると結末がわかっているからか、向かい合って読めた気がしました。と言っても、向かいあったなんて軽い言葉に過ぎず、実際起こっているアフリカの内戦の被害者となる子どもたちは現実に存在しているわけです。書籍を通じて、アフリカで起きていた事実を知り悲痛な思いになるなんて、いかも浅はかな人間と言う気がします。そんな自分と言う人類は本当に知性的な生き物なのか、改めて考える次第です。

人類は知性的な生き物であると言うのは本当か疑問になる

再読して冷静に思うことは、霊長類の中で一番賢く、高い知能を備えているというホモ・サピエンスです。しかし、ルーベンスがハインズマン博士の自宅を訪ねたところで、ハインズマン博士が話していた言葉。

人間だけが同種間のジェノサイドを行う唯一の動物。

我々だけが生き残ったのは、知性ではなく、残虐性が勝ったからー

下巻p161

その通りに実行しようとしていたのが、大統領のバーンズでした。

人類が進化した先の生物が”ヌース”です。人類はヌースの存在を認められませんでした。人類の能力をはるかに超越したヌースは、未来を全て見通すことができます。人類はまだ、自然において何が起こるか予測することしかできません。だから、怖いのでしょう。怖いから、自分の存在を守るために今を必死に生きている。その結果、悲惨なことは耐えないのかもしれません。一方、ヌースは予言ではない世界にいて、未来が見えています。

”複雑な全体をとっさに把握する”ことができるけど、それって少しつまらない気もしてきます。だけれど、このフィクションの中の進化した生物は限りなく平和を求めています。わかっているから相手を差別したりせずに、尊重しあえるのでしょうか。

人間と言う生物を見直すきっかけ

兎にも角にも、やはり人間ってその人の「人格」形成によって善くも悪くもなると言えます。人格形成がされる過程は、親子のやりとり、そして生きていく環境などにより大きく変化します。ただ、その親子のやりとり云々は、人と言う生物が進化して獲得した感情の分化の産物によるところが多いと思います。「怒り」「恐怖」「喜び」「悲しみ」「愛情」「妬み」など。人間の象徴と言って良いほどのこれらの感情。厄介でもあり、人間として生きていく楽しみでもあります。

自分も含めて、人は人と比べて自分を評価する癖があります。それが「妬み」や「嫉妬」などと変化することが多いのです。自分の子どもや家族、自分自身を他人との比較によって価値を見出す中で、子どもの価値観が歪んでしまう可能性があります。

話はそれますが、子どもの情緒の発達段階では「快」「不快」と言う感情は早期に現れます。成長に従い色々な感情が分化して「嫉妬」「妬み」などと言うのは、とても高度な感情と言われています。

人間は進化し過ぎたのかとも思えました。

人間が捨てたものではないという結末

結末はもちろん本書にという形で書きます。しかし人間という生き物が残念と思い悩みながら読む最中、所々に希望が隠されています。だから、面白い。

シゲアキ君同様に、私もこの本が好き過ぎます。感想は言い出すとキリがないのでここらで終了します。