備忘録 〜読書と映画と、時々推しと〜

NEWS・作家 加藤シゲアキくんのファンです

「13階段」高野和明さん 感想です

「ジェノサイド」の作者高野和明さんの作品。第47回江戸川乱歩賞を受賞されています。おそらく、シゲアキくんも「ジェノサイド」をかなり推しているので、読んでいると思われます。

個人的には、「ジェノサイド」よりは、ミステリー感がとても強く読みやすいと思います。

冤罪の可能性がある死刑囚を助けるため

10年前に起きた、殺人事件の加害者として死刑宣告をされた樹原亮。彼の無実を晴らすために定年間近の南郷は調査を依頼されました。そして、その相棒として選ばれたのは、傷害致死事件を起こし、2年の服役後に仮釈放された三上純一でした。仮釈放後に、実家へ戻ってこれから生活を立て直し、苦労をかけた親のために仕事を開始しようという矢先に、純一に南郷が会いにきました。そして、多額の報酬が受け取れるこの調査案件に純一も賛同して二人で事件現場の勝浦市へ向かいます。

読み手に追及心を煽り続ける

多くの情報に面食らうことはなく、丁寧に読み進めてもらいたいと思います。ジェノサイドでも同様でしたが、情報が多いです。しかし、色々な情報を調べて書かれているので、非常に勉強になります。

登場人物の動きが細かく、丁寧に描かれいてるので想像しやすいです。その細かい動きや心情が伏線になっている場合もあります。気づけば高野さんの世界感というよりも、三上淳一や南郷になっている自分がいます。だからこそ、読み進めないわけに行かなくなります。

犯した罪を償うこと

南郷は刑務官として、死刑執行を過去に2回行っていました。詳細は本書を読んでみてください。この行為がどれだけ彼らの心を蝕むのか。本文を読む限りでは、日本という国が応報刑思想と目的刑思想が混合して曖昧な状況になっているからだと解釈しました。

罪を犯した人には罰をという応報刑思想と社会的脅威を取り除くという教育的な目的刑思想。被害者家族は応報刑を強く望み、それは当然のことでもあります。そして社会全体としてもその傾向が強いのは日々感じています。しかし実際は、かなりの数の事件があるのに、死刑宣告になる数は少ない印象です。その理由についは、政治側の事情などがあるようです。それらの中に板挟みのようにいるのが刑務官など、実際に犯罪者の教育や処遇を行う人たちだそうです。だからこそ、南郷のように自分自身にとっての罪の意識として残り続けてしまうのだと思いました。

罪の意識

南郷も三上純一も常に罪の意識を抱えていました。一方、佐村光夫は常に憎悪を抱えていました。元は、三上純一だって佐村恭介に憎悪を抱き続けていました。南郷は死刑執行の業務を行う時には、応報刑思想を奮い起こして、犯罪者に対する憎悪で職務をこなしているようでした。ただ、そのあとは罪の意識に苛むことになります。当たり前のことだけれど、やはり怒りの感情をコントロールすることは、時に命取りになるのだと改めて感じました。

 

最終的に、南郷はまた罪を償う立場に置かれながらも罪の意識と向き合うことになります。罪の償いには「終わりがないな」ということを感じました。