備忘録 〜読書と映画と、時々推しと〜

NEWS・作家 加藤シゲアキくんのファンです

台湾が舞台「流」について

東山彰良 著「流」講談社 2017年 第153回直木賞受賞作

 

先日発売された「このミステリーがすごい!」(宝島社)で加藤さんが紹介されていた「流」を早速読みました。樋口毅宏さんの「民宿雪国」を読んだ後なので、ヘビーな流れが続いています。

魚が言いました・・・わたしは水の中で暮らしていたるんだから あなたにはわたしの涙が見えません  「魚問」より

 

本書を読み上げるまで、この意味がわからなかった。魚は祖父なのかと考えるが、この時代に祖国を離れ、本当の家族とも離れて暮らさなければならなかった当時の人々を例えているのかと。

ボリュームがあるが、飽きない

仕事をしながら読み進めることを1週間かかりました。文庫本約500P

出てくる登場人物は中国や台湾の方の名前のため、人物と繋がりを理解するまでに50Pほどかかった。

舞台は1975年、葉秋生(イエ・チョウシェン)が17歳の時の出来事。祖父の葉尊麟(イエ・ヅゥンリン)が何者かに風呂場で殺されているのを秋生が発見する。

話の最終段階まで犯人が誰なのか検討がつかない。読み手の自分も半ば犯人追及を諦めかけてしまい。どこか青春物語に切り替わってしまう心地になってしまう。

とはいえ、そんな生ぬるい青春時代ではなく、この頃の日本からは想像しづらい厳しい光景が続く。

ボリュームがあるが、飽きない

読み応えは十分にあり、500ページほどある本書を読み終えた時に何とも言えない冒頭からの謎解きが待っていて、腑に落ちていきます。出てくる登場人物は中国や台湾の方の名前のため、人物と繋がりを理解するまでに多少時間がかかりました。

舞台は1975年、葉秋生(イエ・チョウシェン)が17歳の時の出来事。祖父の葉尊麟(イエ・ヅゥンリン)が何者かに風呂場で殺されているのを秋生が発見したことにより、秋生の青春群像劇が始まります。

話の最終段階まで犯人が誰なのか検討がつかみません。それよりも読み手の自分も半ば犯人追及を諦めかけてしまい、どこか青春物語に切り替わってしまう心地になってしまいます。

とはいえ、そんな生ぬるい青春時代ではなく、高校を退学したり、軍隊に入隊したり、ヤクザに絡まれたりと一筋縄にはいかない青春時代でした。

共産党と国民党 

台湾と中国の歴史を理解する必要が出てきました。中国では、1920年代に共産党と国民党に分裂しています。その後、第二次世界値戦で日本と戦うという名目で一度は協力し合いますが、その後の内戦により敗れた国民党は台湾に渡ることとなります。台湾に渡って祖父を持つ秋生の青春物語は祖父の人生を遡るように人生を歩んでいきます。

ゴキブリホイホイという伏線

祖父を殺した犯人が分かりかけるきっかけが、「ゴキブリホイホイ」でした。嘘か本当か、秋生の部屋にゴキブリが多発した時に日本から輸入されたという「ゴキブリ取り」が驚くほどに効果を発揮していました。そのゴキブリホイホイから、宇文叔父さんの謎が溶けてきます。

長いお話ですが、前半での話は伏線になっており、ラストのシーンに繋がってきます。もしも読まれる方は、話が脱線したと思わずに最後まで読んでみてほしいです。読み終わった時に、中国と台湾の悲しい歴史を改めて知ることとなり、感慨深くなると同時に、秋生という青年と一緒に何か人生を辿っているような不思議な感覚になります。